診療科目
形成外科
様々な疾患に対して患者さん一人ひとりに合った治療を。
当院は日本医科大学関連医療・研修施設であり、外来診療も日本医科大学形成外科学教室より派遣された医師が行っております。必要に応じて大学病院へ紹介を行うなどの連携をとりながら、様々な疾患に対して患者さん一人ひとりに合った治療を提供致します。
●形成外科とは
皆さんは形成外科という診療科を聞き慣れない、または聞いたことはあるけれど、どんな病気を治すのかよくわからない、という方が多いと思います。
形成外科では、身体に生じた組織の変形や異常、欠損、整容的不満足に対し、様々な手法や技術を用いることで機能だけでなく形態的にもより正常にすることを目的としています。これにより、患者さんの生活の質(QOL:Quality of life)の向上に貢献する、外科系の専門診療科です。具体的にはどのような疾患を専門に取り扱っているのか、詳細については以下をご覧いただき、自分が当てはまるかもしれない気になる疾患がありましたら、お気軽にご相談に来て頂きたいと思います。
●外傷
- ・擦過傷(すり傷)
- ・切創(切り傷)
- ・刺創(刺し傷)
- ・裂挫創(皮膚が裂けた傷)
- ・咬傷(咬み傷)
創をキレイに治すためには、初期の治療が大切になってきます。ケガをした場合は、早めに形成外科を受診されることをお勧めします。骨折を伴う外傷の場合、整形外科とも連携した治療が必要になることもあります。
ヤケドは日常生活の中で最も多い外傷の一つです。ヤケドをした場所や面積の大きさ、ヤケドの深さなどにより、治った後の傷跡(瘢痕)がケロイド(傷跡が赤く盛り上がったもの)になったり、拘縮(引きつれ)などの後遺症を起こすこともあるため注意が必要です。
●顔面骨骨折
顔面骨とは、顔面の骨格を形成する骨のことで、非常に複雑な形をしており、顔の機能と形態にとても重要な役割を果たしています。顔面骨骨折を生じやすい場所として、
- ・前頭骨(額の骨)
- ・眼窩(眼球の納まっている箱型の骨)
- ・鼻篩骨(鼻とその奥にある骨)
- ・頬骨(ほほの骨)
- ・上顎骨(上の歯茎と鼻の付け根およびその周囲の骨)
- ・下顎骨(下の歯茎と下アゴの骨)
などがあります。治療は、骨折によりずれた骨を元の位置に戻し、チタンでできた小さなネジとプレート(板)で固定するために手術が行われます。近年では、吸収性素材のネジやプレートも使われるようになっています。折れた部位や骨折の状態によって、手術の時期や方法が異なってきますので、受傷したら早期に形成外科を受診することをお勧めします。
●良性腫瘍
表面がゴツゴツした少し盛り上がりのあるアザで、脂腺母斑の場合そこに皮膚癌ができてしまう可能性があると言われているため、ある程度の年齢で切除したほうがよいでしょう。
ホクロと言われる小さなものから、母斑といわれる拡がりをもつものもあります。黒あざは、基底細胞癌や悪性黒色腫といった皮膚癌のできはじめと見分けがつきにくいこともあるので注意が必要です。時には一部を切り取って、組織の検査をする必要があります。生まれつきあるとても大きなものからは、皮膚癌ができる可能性もあります。
皮膚の血管が異常に拡がったり増えたりしてできるものです。部位によっては自然に消えるものや、長い経過で少しずつ盛り上がるものもあります。治療には色素レーザーが適応になる場合や、手術で切除する場合、血管内治療を行う場合などがあります。
ここでは皮膚の下にできたしこりなども含まれていますが、かなり色々な種類があります。外来通院で治療できるものから、入院治療が必要になるものまで、その種類によって変わってきます。気になるものがある際は、まず診察にいらしてください。
●皮膚悪性腫瘍
皮膚のとても浅い部分にとどまっている状態のもので、ほとんど転移することはありません。見た目が湿疹に似ていて表面が赤くザラザラしています。放置すると進行して有棘細胞癌になることがあります。
ホクロに似ることが多いですが、ホクロに比べて青黒く表面がろうそくのロウのような光沢を持つことがあります。顔にできることが多く、転移することはまれですが、中央が潰瘍(皮膚に穴のあいた状態)となり、周囲組織を破壊しながら進行することがあります。
多くは皮膚から突出していぼ状に進行していき、紅色調で潰瘍を伴うこともあります。腫瘍が大きくなると、悪臭を伴うようになることもあります。紫外線の当たりやすい、顔や手背(手の甲)にできることが多いのも特徴です。
日本人では足の裏や手の平にできやすいとされる、黒色の腫瘍です。シミやホクロに似ていますが、形が左右対称でなかったり、周囲がギザギザしていたり、色が均一でなかったりといった特徴があります。悪性黒色腫は悪性度の高い皮膚癌で、今のところ抗癌剤や放射線治療の効き目があまり芳しくない腫瘍です。
いずれにしても早期の治療が大切で、完全に切除することができれば完治することが可能です。
●肥厚性瘢痕・ケロイド・瘢痕拘縮
ケロイドは体質によるものが多く、遺伝することもあると言われています。特に意識しないような小さな傷(例えばニキビなど)からも発生することがあり、痛みや痒みを伴うことがあります。胸や肩、肘や膝、お腹の手術を受けた傷跡や、注射跡やピアスをあけた耳にできることもあります。赤くミミズ腫れのように盛り上がった状態が、元々の傷跡をこえてどんどん拡がってしまうのが特徴です。手術により切除する方法と、手術をしない保存的治療として飲み薬・塗り薬・貼り薬・圧迫固定療法・注射・レーザー等があります。
主にケガや手術の傷跡からできることが多く、ケロイドとは異なり元々の傷跡以上に大きくなることはまれです。しかしこちらもケロイド同様に、痛みや痒み、擦れたときの不快感などを感じることがあります。治療法はケロイドに準じた方法が選択されます。
ケロイドや肥厚性瘢痕による引きつれのため、関節などが動かしにくくなってしまった状態のことです。顔の場合、目や口の周囲に起こることがあり、首・肩・肘・手首・指・お腹・股関節部・膝・足首など、動く部分の様々な場所に発生する可能性があります。
●褥瘡・難治性潰瘍
「床ずれ」とも呼ばれ、身体のなかの骨が突出した部分の皮膚や皮下の組織が、自分の体の重さで圧迫されることにより局所の血流が遮断され、その部位の組織が壊死に陥る状態のことです。皮膚が壊死した部位はやがて皮膚潰瘍(皮膚に穴があいた状態)になります。
麻痺や老衰、体の動きに影響を及ぼす他の疾患によって、自分自身で体位の変換が困難になった患者さんによく見られます。
ケガによる皮膚の欠損、手術後の縫合不全、血管やリンパ管の疾患による下腿潰瘍など、様々なことが原因で生じることがあります。潰瘍の状態・大きさ・発生場所によって、手術によって傷を閉鎖したり、手術以外の保存的治療が行われることがあります。
●眼瞼下垂症
生まれつき上まぶたが十分に挙がらない状態のことで、上まぶたを挙げるのに重要な役割を果たす眼瞼挙筋に異常をきたしていることが原因で起こると考えられます。このため、前頭筋(おでこにある眉毛をあげる筋肉)と瞼板(上まぶたにある硬い部分)を、太ももなどの筋膜(筋肉の表面にある硬い膜組織)でつなげることにより、眉毛をあげる力を利用して上まぶたを挙げるようにする手術を行います。
加齢やコンタクトの長期装用、外力(白内障手術後や痒みにより頻繁にまぶたをこすってしまうなど)などによって、上まぶたを挙げるのに重要な役割を果たしている眼瞼挙筋腱膜が薄くなったりすることで起こるものを呼びます。加齢による上まぶたの皮膚のたるみが原因で生じるものを、特に加齢性眼瞼下垂と呼ぶこともあります。両眼に起こることが多く、ものが見えにくくなったり、まぶたを挙げるのにおでこの筋肉を使ってしまうことで、おでこにシワが生じたり頭痛・肩こり・自律神経失調症状が起こったりすることもあります。眼瞼挙筋自体には問題がない場合、薄くなったり瞼板からはずれてしまった挙筋腱膜を瞼板に糸で固定する手術を行います。
●巻き爪(陥入爪・弯曲爪)
爪の端が周りの皮膚に食い込んでしまうことで、痛みや腫れが生じたり、傷ができて膿んでしまったりしている状態のことです。一般的に「巻き爪」と表現されることが多いのですが、必ずしも爪が巻いているわけではありません。深爪や合わない靴の着用が原因とされており、足の親指に起こることが多いです。爪の切り方や靴の選択の工夫、超弾性ワイヤーや形状記憶合金による爪矯正といった保存的治療と、食い込んでいる部分の爪と爪母(爪の根本にある爪を作っているところ)を切除する手術による治療があります。
爪が横方向に大きく曲がり、爪の下の皮膚をつかむようにして巻いてしまっている状態です。原因は合わない靴の着用と生活習慣からくる外力によるとされており、陥入爪と同様に足の親指に起こることが多いです。こちらも陥入爪同様の保存的治療や、変形した爪の下にある突出した骨を削ることで爪床(爪の下の組織)を平らにする手術などが行われます。
●その他
主におしりやその周囲の皮膚に生じる小さな穴で、毛を含んでいます。おしりの毛が多かったり、長時間の座り姿勢をされる人によく生じるほか、腋窩(ワキの下)などにも生じます。普段は無症状ですが、感染が起こると痛みや腫れが生じ、膿が出てきたりします。感染が起こった場合は、基本的に局所麻酔をした後に皮膚を切開して膿を洗い流します。さらに抗生物質などの内服薬での治療も行います。根本的治療は毛巣洞を切除する手術で、取り除いた後の傷は単純に縫い閉じたり、それが無理な場合は局所皮弁術(周囲の皮膚に切れ込みを入れて、皮膚をずらすことで傷を覆う手術)などを行うこともあります。
唇裂・口蓋裂といった顔面の形態異常、合指症・多指症といった手足の形態異常、陥没乳頭や漏斗胸といった胸部の形態異常など、様々な先天異常が存在します。その多くは、形成外科での手術により改善することが可能です。
(注)こちらに列挙した以外にも、形成外科では様々な疾患を取り扱っています。詳しくは日本形成外科学会のホームページにある、「一般の方へ」を御覧ください。症例の写真をご覧になれる疾患もありますので、ご参考にしてください。